いつかは俺のことを火花みたいだとか言っていた。二人並んで浜辺に立って何をするわけでもなくただ言葉を紡いでいた時だったか?冬の浜に直立していた俺たちに海を渡ってきた風が正面からぶつかってきて、寒さでお互い動こうとしない俺たちのことをまるで風力発電用の風車だとも言っていた。俺にとって彼女のメタファーは時に理解し難く、それは二つのかけ離れたものを単にイコールで?いだだけのように思えた。例えば、「は空気のようだ」―これは意味がついてしまうか。「はわざマシンのようだ」―なかなか理解しがたい。「はブーツのようだ」―いけるか?「は、は―俺のようだ」俺、即ちナギサジムのデンジ。


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「デンジさんって火花みたいだと思いませんか?」
「火花、ねぇ…。またどうしてそんな儚そうな」
「あっ、違いますよ!私は儚さを意図して言ったんじゃ…」
「知ってるよ。俺はアイツはむしろ不発弾だと思うんだがな…」
「…ふはつだん」
がさ。アイツのハートに火を点けたんだろ?じゃあが火花なんじゃないか?」
「……オーバさん…」
「ん?どうした」
「「ハートに火を点けた」って…その言い回し…ここって笑うところなんですか」
「おいおい、もっと会話の本質を見ようぜ!俺の表現方法なんて、」
「くっ……あははは、ははははは」
「ちょっ、おい!」


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を初めて見たとき、俺は結構な衝撃を受けた。俺が散々改造したジムの仕掛けにあからさまにイライラしている彼女は遠目にも際立っていた。内に秘めた闘志がにじみ出ているような。体内で電気を生産しすぎたピカチュウ、と喩えておこう。ジムリーダーとして彼女と言葉を交わしたときに、彼女の中にある燻っていた何かの存在は確実になった。彼女に、町のあちこちでたぶん散々聞かされたであろう俺の武勇伝に対して説教する気はなさそうだった。となると、彼女の挑戦的な目つきは純粋に満足できるバトルへの欲求から来ているのだろうと俺はその時思った。


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「火花と火花っていうのはなあ、ぶつかり合うとそりゃあもう眩しく輝くんだぜ」
「ははは、はは…あれ?何か言いましたか」
「ったくよぉ、いつまで笑ってるんだ!もういいよ」
「え?そうですか?あは、ははははは」
「…。こいつもデンジも似たようなもんだな…変わり者同士、ってやつかな」


***


なるほどそう考えれば、「は俺のようだ」っていうのは納得がいくな。単純に俺たちは結構似ているのかも。火花っていうのも、を見ていれば彼女がどういうことを意図したのか想像が付く。喜怒哀楽で満たされていて、うっかり触れたらすぐにも爆ぜそうな自体が火花みたいだ。俺も他人からはそういう風に見られているのか今度オーバあたりに訊いてみよう。

でも一度爆ぜた俺はもう前の不完全燃焼の俺とは違うんだ
Spark, Sparkle and Ignition!