俺の場合、日々に特に変わったことが無いということは、毎日忙しく働いていますよ、ということに他ならない訳で、一見安穏な生活は裏返すと不安の連続だったりする。つまりこういうことだ。


「ただいまーっと」
「あっ、ちょ、おいこら!」
「なーによ、ジャッキー」
「…、どこ行ってた?」
「あーっ、もしかして妬いてるでしょ!あのね、今日はトレーナー仲間とご飯してたんだ」
「断じて妬いてないっ…「ご飯」?夜中の1時までか?」
「そうだよ」
「……」


俺の幼馴染でもありここに何故か住み着いている彼女の名前は。基本的に長期ミッションで忙しい俺の家を貸している状態であるということについては何も言わないでおくとして、たまに早く帰宅する俺をほっぽり出して遊び歩いていると聞けば妬かない訳にはいかない。レンジャーになった俺を尻目にトレーナーなんかになりやがって、その時点で俺のことなんて全然頭にないように思える。更にどこぞの馬の骨と深夜まで街をうろうろしていたなんて(本当は相手の性別を訊きたかったけれどこれ以上あいつが嬉しそうな顔をするのには耐えられない)、俺に対する配慮が無さ過ぎるね。それも一回や二回の話ではないのだ。ここ数ヶ月俺が緩やかに忙殺されている間に(あくまでも「緩やかに」だ、)こういうことは何度か起こった。俺はその度にやきもきし、俺の手からするりと逃げて自由を満喫するとのいたちごっこが日常になりつつあることを嘆いた。こんなことを言うと俺は相当な束縛好きだと思われるかもしれないが、腐っても寝起きを共にする俺たちは(注:夫婦、という意味ではもちろんない。物理的にも寝室は別だ)それなりの間柄になっているわけで―そうだと信じたい―彼女があんまり節操のないことをすると、俺も日常を脱さなくてはならない、こんなふうに。


「ちょっと!もういいでしょ、離してよ」
「……
「なに」
「最近マンネリ気味なんだ。ミッションでは大型ポケモンのキャプチャばっかりさせられるし」
「…それで?」
「いや、たまには可愛い子リスちゃんも狙いたいなって」
「…?」
の唇、キャプチャオン」




おしおきだよ、非日常的でいいじゃないか
Pepper with me