caution ... 以下の文章はあなたの気分を害するおそれがあります。精神年齢18歳以下の方には閲覧をお勧めしません。
lesson 2.5
(Never whisper sweet words to me)
「―言葉は、意味を成さない」
ねっとりとした口調で彼は囁いた。
「理解していなければ解けない暗号とか、そういうことではなく、」
夢見るように顎を少し上げて顔をどこかへ向けた。埃なんかを見ているのかもしれないと私は思った。
「ただ単に、機能しないんだよ―特に」
その間も彼の指は私の口腔を蹂躙し続ける。
「こういう時はね」
息をするのに苦労している私を見てほくそえんでいるのかも知れない。涙が私の意思と関係なしに浮き上がってきてよく分からないのだ。
「君が甘く儚く正当化してるその行為だって、動物の本能に染み込んでいるんだよ」
泣こうとして泣いているわけでもなく、泣かされているわけでもなく、ただ貪欲な生への願望が視界を曇らせる。
「半分空気のわたあめの中心には割り箸があるよね」
この人の言う事が意味不明なのはいつもの事だ。ついでにその存在も謎であり、―けれど私は抵抗とも取れない言動を取ってしまう。きっちり誘いに乗っているのだ、要は。
美しい指を引き抜き、唾液にまみれた顔を背けて私は早口でまくし立てる。
「ゲンさん、気持ち悪い。趣味悪い、私なんかに構っちゃって…、それに言葉をそんなに上手く操れるのにどうして良い様に使わないの?私を口説けばいいじゃない、言ってよちゃんと、凡庸な愛の言葉でも何でもいいから。それと……なんていえばいいかわかんない…き、気持ち悪いんだってば!気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪」
パチンと音がして、数秒後頬に痛みを感じた。
「黙って聞いていてくれ」
「っ」
嗚咽を漏らす度に上がったり下がったりする私の喉仏を指でさすっていた。
「…それじゃあ、訊くよ。今、僕に抱かれたい?」
私は顎を震わしながら頭を落とした。再び面を上げると彼は言った。
「これが、最後の言葉だよ。いいね?」
そうして彼の指が糸を引きながら私から抜かれ、今度は深淵へと誘う。
(実技、開始)